2010年12月11日

マンガに多様性を 〜 東京都青少年健全育成条例改正問題に思うこと 〜

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種の多様性という言葉があります。
生態系を語る上で、最近よく使われる単語ですね。

自然界はいろんな種類の生物を存在させることで、環境の変化に対する強靭さと未来への柔軟性を保持している。
だから、どんなに害のある生き物でも人間の都合で絶滅に追い込んだりしてはいけない、という。
奇妙に思われるかもしれませんが、私はマンガにも同じような事が言えるんじゃないかと思うんですよ。

「影響を受けたマンガは?」と聞かれて胸を張って言える名作から、
好きだったことをちょっと人には言いづらい秘密のアレまで。
わが国で昔より創り出され読み継がれてきた多種多様なマンガの作品たち。
そうやって自由に描いて自由に読める環境があったからこそ、今のマンガ文化があるのではないかと。
かくいう私自身も手塚治虫先生を始め、多くのマンガ作品に感動をいただいてきました。

その一方で、

雨ざらしで捨てられていたのを拾ってきて一枚一枚丁寧に剥がし物置に隠しておいた「あのマンガ雑誌」や
本棚の隅に、外側だけ学習参考書の外カバーを付け替えて置いていた「あのマンガ」のことも
忘れることはできないんですよ。

清濁含め今まで読んで来たすべてのマンガが「最高に面白いマンガ体験」として私の中に積み上がっている。
現在の私の絵を形作り、思いつくアイデアの源泉になっている。頭の中のインスピレーションを駆動し、
さまざまな形で、いろいろな方向へ、枝葉のように伸びていく。
それが「個性」となるのだと思います。

なのにそのプロセスにかかる検閲まがいのノイズが入ったらどうなるのでしょうか。

「このバトルは最終的に主人公がラスボスの命を奪わざるを得ない・・・でもそれって殺害の肯定になるんじゃ?」
「悪い奴からだけ盗む大ドロボウ・・・結局窃盗をそそのかすことになりはしないか?」
「もはやこれまで、潔く切腹を・・・・自殺を賛美するのか?」

あれこれ悩んだ挙句にボツにするアイデア、ネタが噴出することでしょう。

後に残るのは当たり障りのない無難な作品ばかりが金太郎アメのようにぞろぞろ。そうなったら
「最近マンガってつまんなくね?どれも似たようなのばっかしで」と、読者にジャンルごと飽きられて消費激減、
その結果マンガ家を目指す若者も激減、最悪の事態を招くことになりはしないでしょうか。

今回の改正案は、
「性的感情を刺激し、残虐性を助長し、自殺もしくは犯罪を誘発するかも〜とこちらが判断した
マンガはぜーんぶ不健全図書にして、作品としての名誉と売る機会を奪っちゃうよ!以上!」
という、やりようによってはいくらでもサジ加減の利く極めてあいまいなものです。

「だから柔軟な対応ができるんだ、もっと我々を信用してもらいたい」というのが向こうの言い分でしょうが、
あまりに早急な展開による議論不足、たびたび報道される東京都側の挑発的なコメントを見るにつけ、
不信感を拭い去ることはどうしてもできません。

自分たちの価値観に合わない作品を一方的に駆除する、間引きする。
優れた種のみを選別していけば理想のユートピアができるとでも?

・・・いいえ、多様性を失った生態系の先にあるのは、衰亡の未来だけです。


現在この青少年健全育成条例の改正に関係しておられる方、
どうか、いま一度、慎重な熟慮をお願いいたします。
                              山桃浩司



私ごとき末席以下の者がこのような意見をすることは僭越にもほどがあるのですが、
今回の早急な展開に危機感を覚え、書かせていただきました。
出しゃばりついでに与太マンガをひとつお送りします。
OPPRESSというタイトルで、ちょうど以前の規制騒ぎが起きた頃に勢いで描きました。
ちょっと気持ちの変化があって発表せずにおいたのですが・・・。

オチも含めてもちろんフィクションです。こんな未来が来るわけないと信じています。
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posted by 山桃浩司 at 14:06| それ以外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする